江湖好漢録/武勇双侠
  作者: ミコ   2017年03月27日(月) 22時30分25秒公開   ジャンル:武侠
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第五部 『真の正体』

四半刻ほど前に遡る。

阿越
「そこの小柄なお嬢さん!」

純月
「あたいのことかい?(心の声:いい男!それに剣も持ってる。これで剣裁きもすごけりゃ完璧だよ)」

阿越
「その背中の剣は護身用か?」

純月
「ええ。兄さんはその身なりからすると剣客かな?」

阿越
「剣に興味があるなら見せてやるから、うちに来ないか?」

純月
「会ったばかりで家には行けないよ」

阿越
「俺は阿越、お嬢さんは酔酒憩廠で働いてる娘さんだろ」

純月
「あたいを知ってるの?」

阿越
「店にいるのを見たよ。あの店には前に何度か行ったし、主人もよく知ってるよ」

純月
「そうなんだ。家は近いの?」

阿越
「すぐそこだ、剣裁きも見せてやるよ」

純月
「じゃあ、ちょっとだけ」

阿越と家に向かった純月はまず、剣裁きに見せてもらった。

純月
「すごいね!いつからやってるの?」

阿越
「五歳から武術を始めて、剣を握ったのは七歳の時だから二十年になる。次は手合わせでもするか!」

この間、京虹とやったときにように純月は向かって行くが、阿越の剣法は京虹とは躱し方も違えば攻め方も違っていた。

純月
「なかなかだが、躊躇いがあるな。それでは上達しない。相手の気力に勝たなければだ」

純月
「気力か。身を守ることで必死なんだよ」

阿越
「疲れたろ、茶でも煎れるよ。それとも酒がいいか?帰ったら呑もうと思って肴も作ってある」

純月
「へぇ。料理もできるんだね」

阿越
「誰も作ってくれないからな」

純月
「美味しいね、こんなのが作れたら奥さんなんかいらないか」

阿越
「純月が嫁になってくれるか?」

純月
「なに言うんだよ。阿越みたいないい男なら女に困らないだろ?いっぱい女を泣かしたんじゃないの?」

阿越
「そんな男に見えるか?」

純月
「あっごめんなさい。そんなつもりで言ったんじゃなくて、でもいい男はホントだよ」

阿越
「純月は面白くていい娘だな。なぁ、俺たち縁があると思わないか?だってお前の名と俺の名は字は違えども読みが同じ文字がある」

純月
「そうだね。会ったのも偶然、名前も偶然だね」

阿越
「偶然じゃない。俺はお前を初めて見た時からこの日が来るのを待ってたんだ」

純月
「どう言うこと?」

阿越
「あの店の前で財布を掏るのを見た時から、お前を幸せにしてやろうってな」

純月
「み、見てたのか?」

阿越
「あぁ。飯を食いに行こうとして、そしたら」

純月
「あたいはそういう女だよ、なのにどうして?」

阿越
「今は違う、立派に働いてるだろ。俺のところにこいよ」

純月
「あれ?なんか眠くなってきたよ。酔ったのかな?」

阿越
「酔ったのは酒にじゃなく俺にだろ?」

純月
「だ、だめだよ」

阿越の腕に抱かれ押し倒されるが、言葉とは裏腹に拒否したくない気持ちもある。

阿越
「俺のこと嫌いか?いや、その目は嫌いじゃないよな?」

純月
「会ったばかりなのにこんなこと」

阿越
「俺たちがこうなるのは運命なんだよ」

顔が近づき、唇が迫ってくる・・・
純月は阿越を見つめ目を閉じる。
胸元に指がかかり・・・

阿越
「純月、、お前はもう俺のものだ」

純月
「く、苦しいーー」

阿越
「苦しさもこれ快感、どうだ?堕ちていくだろ?」

次の瞬間、右胸の上に激痛が走った。

純月
「な、なにしたんだ!?」

阿越
「俺のものになったんだよ!」

京虹
「純月!」

阿越
「いいとこだったのに、邪魔者が来たぜ」

京虹
「おい、なにしてる?」

阿越
「男と女がする、いいことさ!剣を見せてやるって言ったらのこのこ家までついて来たんだ。こいつは俺に惚れてるのさ。だから可愛がってやったのさ」

京虹
「女を誑かして気持ちがいいか?剣を出汁に使うなんて汚い野郎だ!純月になんの恨みがある?」

阿越
「俺に惚れたのが運の尽きさ!恨み?そいつは自分の胸に手を当てて考えてみろ!」

純月
「京哥、、、い、痛いよー」

阿越
「早くしないと針が骨に達するぞ!」

そう言うと阿越は走り去った。

京虹
「針はどこに刺さってるんだ?」

純月
「右胸だよ、早く抜いて!」

京虹が純月の胸元を開けると右胸の上が赤く腫れ上がっている。

京虹
「すぐに抜いてやるからな」

剣で少し皮膚を切り針を抜いた。酒で消毒をして起こし上げようとすると、純月が話し始めた。

純月
「あたいって馬鹿だね、剣に釣られてこのザマだよ」

京虹
「さっき見かけた時に声をかけてればよかった。仲よさげにしてたから、てっきり情人かと思ったんだ」

純月
「あいつ、あたいを知ってるって言ってた。いい男だったし、あたい、あーいう男に弱いんだ。なんて言うかさ、ちょっと野暮ったくて、でも優しくて、でもとんでもない奴だった」

京虹
「弱みにつけ込むなんて最低の野郎だ!」

純月
「あーもう忘れる!それにあいつ、あのときにね、首を締めながらにやっと笑ったんだ。そんなのあるの?」

京虹
「俺に聞くな、まっ、そう言う趣を持った男もいるってことだろ。起きれるか?」

京虹は純月を抱きかかえ、酔酒憩廠へと戻った。

昭卓
「純月、どうした!?」

連飛
「やはり悪い予感が的中したようだな」

京虹
「的中ってなんのことだ?それにみんな集まってなにかあったのか!」

昭卓は女性三人に起きた奇妙なことを京虹に話した。

昭卓
「それで純月のことも心配していたら案の定こんなことに」

京虹
「その四鬼邪班とは一体何者なんだ?」

連飛
「鬼影、邪鬼、疫鬼、鬼毒の名を持つ邪悪な連中で、それぞれが武術の達人だ」

京虹
「そいつらがこの四人の女性に、それぞれ卑劣な手段で襲いかかったというのか?狙いはなんだ?」

無雲
「京虹さん、狙いは俺たちかもしれない」

京虹
「俺たちって無雲さんたちはあいつらに恨まれる覚えがあるのか?」

無雲
「すべてを話すしかなさそうだ、なぁ昭卓」

昭卓
「そのようだな」

無雲
「俺たちは七彩仁幇という名の義賊だ。元々、俺は一人で動いていたが、夢輝と賭場で知り合いイカサマ野郎の金銭を巻き上げることを思いついた。義賊は知っての通り悪い奴から奪った金を貧しい者に与えるのが筋。そこに常連客だった永偉が加わった」

永偉
「その頃おれは親父の店を継いだがなかなか上手くやれなくて、他の商売人たちに馬鹿にされてた。だがその中には役人に賄賂を渡し、裏で上手くやってる奴がいることを知ったんだ。それでヤケになって賭場で遊んでたおれを無雲が拾ってくれたんだ」

徳明
「俺もこれまでいろんな店で歌ったが横柄で高慢な客もいて、酒を引っ掛けられた事もあった。ここで酔って暴れそうになった時、永偉が誘ってくれたんだ。詩音との出会いはある富豪の誕生日会だったな」

詩音
「わたしと徳明は共に芸術の道を歩んでいたから惹かれ合ったのね。私も絵を描く手段として場所を選べなくて富豪の屋敷に呼ばれて色目を使われることもあったわ。お金のためとは言え我慢できなくなって仲間になったの。女性は夢輝さんもいたし」

夢輝
「ワタシも最初は無雲のために店を提供しただけだったけど、客の中には悪いのもたくさんいてね。無雲の志に心を打たれて。それで仲間に」

昭卓
「わたしは捕吏だった。だがある日、盗賊に賄賂を受け取った仲間の裏切りで死にかけた。追われていたところを無雲に助けられ、捕吏を辞め親父がやってたこの店を継ぎ無雲の相棒になったのだ」

蘭花
「あの時は心配したし、捕吏の職を失うことにもなかなか賛成できなかったけど、話を聞いて義賊が決して悪漢じゃないことを理解した上で私もお手伝いすることにしたの。この仕事に誇りを持ってる亭主と一緒ならってね」

無雲
「奴らはここ数年ほど町にいて、俺たちの動きに気付いていたのかもしれないってことさ」

京虹
「四鬼邪班の目的が君たち七彩仁幇だとすれば、純月は巻き添えを食ったのか?」

青雷
「その娘さんの様態はどうだ?」

京虹
「胸にこの針を刺されてたんだ。すぐに抜いたけどまだ体が弱っている」

青雷
「芙蓉金針!?そいつにやられたら抜いてもしばらくは熱を持って内力も落ちる。わしの内力を少し分けてやる、部屋に連れて行くぞ」

連飛
「すべては宝石問屋の一件に結びつかないか?そうだとすれば賭場にいた私たちとも繋がるし、狙いが君たち七人と、私たち二人に関係する者への仕打ちと言うことになるだろ」

無雲
「あぁ。欣強が言ってた長身の男と賭場にいたもう一人の男が黒幕かもしれないな」

京虹
「あの二人には四鬼邪班という仲間がいたということか?」

連飛
「四鬼邪班は盗賊ではなく、元々は江湖の侠客だ。腕の立つ四人組で利害が合えば仕事を引き受けるんだ」

京虹
「金で動く侠客ということか」

無雲
「きっと、疾風烈火の二人に雇われたのかもな」

純月
「皆さん、ご心配をおかけしました」

青雷
「純月には少しだが内力があったから、わしの内力を少し与え回復した。実は我ら一門が壊滅に追い込まれたときに同志の一人があの針にやられ命を落としてる」

京虹
「では、鬼影に?」

青雷
「いや、鬼影の師匠で鋼鎖団の一番頭だった鬼丸の仕業だった」

一方、疾風烈火の根城では、、、

羽丹
「ご苦労だったな、これは約束の報酬だ」

鬼影
「あんなの俺らにしてみりゃ朝飯前だ。だが、これで終わりじゃないだろ?」

羽丹
「あぁ、あれは序章にすぎないさ。これで奴らの闘争心に火も点いたことだし、これからが本番さ。もうひと働き頼むぜ」

邪鬼
「報酬さえもらえれば、なんでもやるぜ」

兆軍
「きっと今頃、七彩仁幇の奴らはあの二人の侠客と碧仙門の用心棒と俺らを倒す相談でもしてるんじゃねえか」

疫鬼
「七人のうち、男は四人だけだろ?俺ら六人なら容易いもんさ」

兆軍
「だが、酔酒憩廠の主人と連飛、京虹の二人は凄腕と見た。舐めちゃいけないぜ」

鬼影
「師匠に聞いた話じゃ用心棒の青雷って奴も、只者じゃない。しかし、お前ら二人がなぜここまであいつらに執着するのかわかんないぜ」

邪鬼
「俺らは綺麗な女をものにできて金さえもらえりゃってことだけど、お前ら二人の真の目的はなんなんだ?」

羽丹
「碧仙門との戦いの時まだ下っ端だった俺は、腕も未熟で参加させてもらえなかった。戦いに勝ったとはいえ、跡目争いで内戦が起き一門は解散した。鋼鎖団の一員としてなにも果たせなかったことが悔しくて、兆軍を誘って疾風烈火を組んだんだ」

兆軍
「俺はその頃、ある武術家の下で学んでいたが、お前は凶暴だと悉く言われ続け腐ってた。武術の腕が強いだけでなんの徳がある?義だけ生きていけるか?そんなとき丹哥と知り合い、一旗揚げようと相棒になったんだ」

鬼影
「お前は鋼鎖団の残党で連飛に恨みもあるし、俺ら四人は師匠を青雷に殺られてる。それぞれが生き場所を失った者同志ってことだな」

羽丹
「町に来たが七彩仁幇の存在で仕事も思うように行かないしな」

兆軍
「そうさ、俺らにはなにもない。いい女すら横にいないぜ」

邪鬼
「だけど仕事とは言え、俺の獲物の鉄紺厨師の妻、桃好太太は目がくりっとして愛嬌があるいい女だったぜ。桃色のいい女房の名の如くな」

疫鬼
「俺の獲物は幇主、金笛童子の情人、深緋夢師だ。俺は小柄だからああいうすらっとした女が好みなんだ。粋で気立てもいいし、腰のくびれもなかなかだったよ。名の如く夢を見させてくれたよ」

鬼毒
「俺の獲物は枇杷酔声の情人、瑠璃書家だ。知的で且つ清楚で俺の理想の女だ、絵も最高だったよ。ところで鬼影の獲物はどいつの情人だ?」

兆軍
「あの娘は俺に生意気な口を叩いた酔酒憩廠の使用人さ。あそこにいたのが運の尽きってやつさ」

鬼影
「その運の尽きのお陰で俺の獲物になったのは、俺にしてみりゃ最高の当たり籤さ。生意気そうだが、俺の前じゃ子猫のようにウブで可愛いかったぜ。もし仕事抜きで会ってたら間違いなく俺の方が堕ちてたな。あのままどうにかなりたかったくらいだぜ」

邪鬼
「マジかよ?越哥がそんなこと言うなんてこりゃマジでヤバいぜ」

兆軍
「俺ら二人じゃ勝ち目はなかったが、利害が合ったお前らと組めば恐いものなしだ」

羽丹
「よし、それじゃ明日の夜一気に攻め込む。夕刻またここにここに来てくれ。すべてが終わったら、残りの金は山分けだ!」


酔酒憩廠ー

青雷
「連飛のことは江湖にいた頃の腕も人柄も知ってるが、京虹のことは腕もそうだが素性も知らない。お前が町に来た目的はなんだ?」

京虹
「純月には話したが両親の復仇のためだ。連哥にも話そうとしたがあれこれあって話してなかったな」

連飛
「お前はなにか掴めたのか?」

京虹
「今日一日歩いて手かがりとなってたこの金具のことが判った。これは腕輪の鐶で江湖のある悪漢たちの物だった」

青雷
「見せてみろ。それは我ら一門を壊滅に追いやった鋼鎖団が身につけてた腕輪だぞ」

京虹
「では俺の母さんは鋼鎖団の奴に襲われたのか?母さんが襲われた場所にこの鐶が落ちてたんだよ」

京虹は純月に話した過去のことをもう一度皆にも話した。

純月
「その腕輪、欣強を追ってきた男とあたいを騙した男がしてたのと似てないか?」

欣強
「と言うことは阿京のお袋さんを襲ったのは、そのどちらかなのか?」

京虹
「母さんが襲われたとき、俺は姿を見てないんだ」

無雲
「どっちにしても疾風烈火の二人と四鬼邪班は鋼鎖団と関わりが出てきたことに間違いないし、俺たちの敵だ!」

青雷
「奴らの気質からするとこのままでは終わらないぞ。わしたちも手を組まんか?」

連飛
「私と京虹は縁あって出会った。京虹、義兄弟の契りを交わさないか」

京虹
「俺一人じゃ到底太刀打ちできない相手だ。連哥、頼むよ!」

純月
「はい、契りの杯。二人には世話になったから、いい名前を授けるよ。武勇双侠ってのはどうかな?」

連飛
「そいつはいいな、なぁ兄弟!」

京虹
「いいね、連飛大哥!」


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