江湖好漢録/武勇双侠
  作者: ミコ   2017年03月27日(月) 22時30分25秒公開   ジャンル:武侠
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第四部『卑劣な目論み』

同じ頃、夢賭庵ではー

夢輝
「この間の易者たちには参ったね。あんなのが来たら仕事がやりにくいったらないわ」

無雲
「ケチ付けてくる客はたまにいるが、あの二人はちょっと違う類の輩だな。また来るって言ってたし気をつけないとな」

夢輝
「永偉が連れてきた兄さんたちはどうだい?」

無雲
「連飛は江湖でも知られた侠客で、腕も相当な人物だ。もう一人の京虹は初めで見るが目つきに鋭さがあったし、竹筒の中の剣も伊達じゃなさそうだ」

夢輝
「ワタシたちもこれから仕事をしていく上でいろいろと考えることが増えるわね。江湖から来る侠客の中には義を重んじる者もいれば、悪漢もいるしね」

永偉
「こんちは!情報を持ってきたよ」

無雲
「なにか分かったか?」

永偉
「昭卓に聞いた話だとその前に店に怪しい僧侶が二人来たようだが、俺が易者たちの話をしたら風貌が似てたんだ。きっとあれは変装だよ」

無雲
「江湖から来た悪漢かもしれないな。盗賊団の頭角だった鋼鎖団が解散のあとも残党や弟子だった奴らもいるしな」

永偉
「あの二人がその残党だったりしてな」

夢輝
「私は商売の邪魔さえされなきゃそれでいいよ。さてと、夜の準備でもしようかしら、、、(ギクッ!)いたたたたー!こ、腰が!」

無雲
「ぎっくり腰か?」

夢輝
「前からたまに痛かったんだけど」

無雲
「筋を治すことくらいはできるが、ぎっくり腰は下手にやれないからな」

永偉
「ここに来るときに幟を持って歩いている按摩師を見たぞ。探しに行くか?」

夢輝
「行きたいけど、動けないのよ」

永偉
「おれがちょっと見てくるよ」

しばらくすると永偉がその按摩師を連れてきた。

阿宝
「どうしました?」

無雲
「ぎっくり腰らしい」

阿宝
「では診てみましょう・・・これはやはりぎっくり腰ですね。しばらくかかるのでお預かりしますよ」

無雲
「店はどこだ?」

阿宝
「この先にある知人の家を借りています。目印は軒先に蛇皮が吊るしてあります。良くなれば歩いて帰れるかもしれませんが、終わったらお送りしましょうか?」

無雲
「悪いから頃合いを見て迎えに行くよ」

無雲は阿宝と言う按摩師に夢輝を預け店に戻った。

阿宝
「先ほどのは旦那さんですか?」

夢輝
「いいえ、仕事仲間よ」

阿宝
「お仕事はなにを?」

夢輝
「この先で賭場をやってるんですよ」

阿宝
「それでは長時間、同じ体勢でいることが多いんですね」

夢輝
「それが原因ですか?」

阿宝
「ゆっくり揉んでいきますので、どうぞ楽になさってください」

背中から尻にかけてゆっくりとさすられていく。

阿宝
「痛いですか?」

夢輝
「いいえ。気持ちいいです」

阿宝
「ここ辺りはどうですか?」

夢輝
「そこも気持ちいいわね」

阿宝
「賭場ってもしや夢賭庵のご主人ですか?」

夢輝
「そうよ。今度遊びに行らしてね」

阿宝
「私は賭け事には興味がなく、さっぱり判らなくて」

夢輝
「素人さんにも親切だから大丈夫よ。あーホントに気持ちいいわ」

阿宝
「眠くなったら寝てくださって構いませんからね」

すると夢輝は疲れていたせいか、あまりの気持ちよさに寝てしまった。

しばらくして無雲と永偉は夢輝の様子を見に出かけて行くが、途中でお得意さんである妓女に会った永偉は簪を取りに店に寄ると言うので無雲は一人で迎えに行った。

無雲
「夢輝、迎えに来たぞ!」

中へ入るが、誰もいない。
すると奥から物音がしたので行ってみると、夢輝が床でもがいている。

無雲
「終わったのか?」

夢輝
「、、、」
夢輝は黙って頷く。

無雲
「まだ動けないのか?」

夢輝
「、、、」
夢輝は黙って頷く。

無雲
「まったくあのヤブが!おい、口が利けないのか?」

夢輝
「んーーん」
夢輝は首だけを動かし身振りで伝えようとする。

無雲
「点穴されてるんだな、喋れないのもそのせいか?」

夢輝は首を大きく縦に振った。

無雲
「畜生!すぐに解いてやる」

先ず口が利けるように点穴を解くと、そこに阿宝が現れた。

阿宝
「来るのが少し遅かったな」

無雲
「貴様、なにをした!なんの恨みだ?」

阿宝
「早く解かないと痺れで気がふれるぞ!恨み?それは自分の胸に手を当ててよく考えろ!」

阿宝はそう言うと出て行った。

無雲
「どこが動かない?」

夢輝
「腕と足よ。特に下半身は痺れで力が入らないわ」

無雲
「よし!あーーーっと」

夢輝
「どうしたの?」

無雲
「三ヶ所ほど触るぞ」

夢輝
「解くためだもの仕方ないわ」

無雲
「腕を解くには鎖骨、足は太腿、下半身の痺れは、、、」

夢輝
「下半身の痺れは?」

無雲
「ち、恥骨だ。い、いいのか?」

夢輝
「解けるならいいわよ。照れてどうすんのよ!」

無雲
「一瞬だ、行くぞ!」

無雲がトントントンと三ヶ所を突き点穴を解くと、夢輝は起き上がった。

無雲
「他にはなんかされなかったか?」

夢輝
「按摩はきちんとやってくれてお陰でぎっくり腰も治ったし、腰の痛みもなくなってるの。でもやってる間は夢賭庵のことや無雲のことを聞かれたわ。それで終わったあとにお茶を煎れてくれて、飲もうとしたら体を突かれて」

無雲
「お前にこんなことして狙いはなんだ!?」

同じ頃、蘭花は買い出しのついでに店が益々繁盛するようにと吉運宮に祈願に行っていた。
お参りをしようと中へ入ろうとすると若い宮司に声をかけられる。

阿能
「そこの若奥さん、ご祈願ですか?」

蘭花
「ええ」

阿能
「特別な経をご奉仕しておるのですが、いかがでしょう?お代は御布施で結構ですので」

蘭花
「そうですか?ではお願いしようかしら」

蘭花は宮司に、吉運宮の裏にある古びた廟に連れてこられた。

蘭花
「ここでやるのですか?」

阿能
「ここは聖地ですのでご安心ください。私のあとに続き唱えてください。さぁ目を閉じて、いいですか!」

茣蓙に座らされた蘭花は目を閉じて延能のあとに続き唱え始める。
しばらくすると、鐘の音が鳴り香が炊かれた。

蘭花
「この匂いはなんですか?」

阿能
「目を開けてはいけません!これは特別な香です、さぁ唱えなさい!」

次の瞬間、息が苦しくなり体が締め付けられるような感じに襲われた。

蘭花
「苦しいー!た、助けてー!」

目を開けるが、辺り一面が黄色い煙で覆われなにも見えない。
体はなにかゴツゴツしたもので縛られている。
そのうちに気を失ってしまったようだ。

店で蘭花の帰りを待っていた昭卓は、買い物へ行くと出かけたきり帰らないことを心配し、見に行くことにした。

肉屋の主人に商売繁盛の祈願に行くと言ってたことを聞いた昭卓は吉運宮に行ってみることにした。

参拝所にも居ないし、辺りを見渡すがどこにも蘭花の姿がない。
ふと裏の方に廟を見つけて近づいてみると、隙間から煙が漏れているのに気づき、いやな予感がした昭卓は入り口の木戸を蹴り開けた。

阿能
「やはり来たな」

昭卓
「お前は誰だ!ここでなにしてる?」

阿能
「早く、奥方を助けた方がいいぞ」

阿能が指差す方を見ると蘭花が巨大な数珠に巻かれ倒れている。

昭卓
「なんで妻にこんなことを!なんの恨みだ?」

阿能
「早く解かないと数珠が体を締め付け、骨が砕けるぞ!恨み?それは自分の胸に手を当ててよく考えろ!」

阿能はそう言うと走り去っていった。

昭卓
「これは眠り香だな。すぐに数珠を解いてやる!」

昭卓は手ぬぐいで口を塞ぎ、蘭花を抱え外へ連れ出した。
太い木の枝を折り、数珠と体の間に差し込み思いっきり引きちぎる。小枝で経脈を突き気道を開くと、蘭花は目を覚ました。

昭卓
「大丈夫か!どこか痛いところはないか?」

蘭花
「肋骨の辺りが少しだけ。私どうしたの?」

昭卓
「あいつになにかされたのか?」

蘭花
「煙がすごくてよく見えなかったけど、あいつの数珠を首に巻かれたと思ったら次の瞬間体を締め付けられて」

昭卓
「商売繁盛だなんて皆を騙してるのか?それとも!?」

一方、詩音は絵を描きに町の中央を流れる小川に来ていた。
岩に腰掛け絵を描いていると、後ろに人の気配を感じた。

阿晋
「お嬢さん、素敵な絵ですね」

詩音
「沈丁花と言ってこの頃に咲く花です」

阿晋
「絵は趣味で?それともお仕事ですか?」

詩音
「最初は趣味で始めましたが、今は少しですけどお金になってます」

阿晋
「売られているのかな?」

詩音
「この先の酔酒憩廠でお客さんの似顔絵を描いて、気に入れば買ってもらえるの。でも本当は花の絵を描くのが好きなので今日はここで」

阿晋
「では、描けたらその絵を僕に譲ってください。あっいきなりで失礼しました。僕は薬草売りの阿晋で、ここには薬草を採りに来ました」

詩音
「私は詩音といいます」

阿晋
「採ったら戻ります」

詩音が絵を描き終わるとちょうど阿晋も戻ってきた。

阿晋
「これは素晴らしい!50文で譲っていただけますか?」

詩音
「そんなに?悪戯で描いただけなのに申し訳ないわ。薬草は採れました?」

阿晋
「ええ。薬草も採れましたが、珍しい蝶も見つけて。この蝶は病気の治療に使える貴重な蝶なんです」

詩音
「私、蝶々大好きなの」

阿晋
「見てみますか?」

阿晋が小さな木箱を開けて見せると、そこには色鮮やかな蝶が入っていた。

詩音
「すごく綺麗ね!」

覗き込んで見ようとした次の瞬間、蝶が飛びだし詩音は首筋を刺されてしまった。

阿晋
「詩音さん、生き物は美しいほど危険なんですよ」

詩音
「危険?」

阿晋
「この蝶は青衫黃と言う毒蝶なんですよ!」

詩音
「えっ?痛い、すごく痛くなってきたわ」

するとそこへ徳明がやってきた。

徳明
「詩音、絵は描けたか?」

阿晋
「来ましたね」

詩音
「徳明、助けてー」

徳明
「お前は誰だ?なにをした!」

阿晋
「大好きな蝶に刺されて幸せだろ?でも三十分後には毒が全身に回り、男なしじゃいられない体になってしまうぞ!」

徳明
「解毒剤を出せ!なんの恨みだ?」

阿晋
「解毒剤なんてないさ!見てみろ、この蝶は女を刺し満足して死んだ。ってことは?考えれば答えは出るさ。恨み?それは自分の胸に手を当ててよく考えてみろ!」

阿晋はそう言うと走り去っていった。

徳明
「どういう意味だ?」

徳明は阿晋の言葉をもう一度考えてみる。

徳明
「この蝶は詩音を刺し息絶えた。満足?刺して満足?、、、そうか!」

意識が遠のきかけている詩音の首筋の刺し口に、そっと口づけをし吸ってみると甘い液体が出てきた。
すぐに吐き出し詩音を見ると、顔色が良くなり目を覚ました。

詩音
「私、助かったの?」

徳明
「毒はもう吸い出したから大丈夫だ」

詩音
「なんだか、首筋が熱いわ。吸い出したってまさかここを?」

徳明
「助けるためにはそうするしかなかった」

詩音
「毒が抜けなかったらわたし死んでいたかもしれないのね、恐ろしいわ」

徳明
「死ぬよりももっと恐ろしいことさ」

詩音
「死ぬより恐ろしいって?」

徳明
「男狂いになってのさ」

詩音
「えっ!?」

徳明
「狙いは詩音だったのか!?」

京虹はあれからしばらく町を歩いて回り宿へ戻ろうとすると、先の曲がり角で純月が浪人風の男と歩いているのを見かけた。
声をかけようとしたが、親しげで楽しそうなところを邪魔してはと思い見過ごすことにした。

宿に戻った連飛が食事をしようと店に行くと、昭卓たちが集まっていた。

連飛
「そんなに神妙な顔でみんなでなんの相談だ?」

昭卓
「それが先ほどこの三人の女性が、それぞれ奇妙な輩に襲われた。夢輝は按摩に行って点穴され、妻は祈願に行った先で巨大な数珠に巻かれ、詩音さんは毒蝶に刺されて」

連飛
「点穴に巨大な数珠、それと毒?まさか!」

無雲
「俺も夢輝のことだけじゃ気付かなかったが、あとの二人の話を聞いて連飛さんと同じことを考えてたんだ」

永偉
「同じこと?」

連飛、無雲
「四鬼邪班だよ!」

永偉
「四鬼邪?と言うことはあと一人が餌食になるってことか?」

昭卓
「そう言えば遣いに出たきり純月が戻ってないぞ」

連飛たちが純月のことを案じていると、欣強が戻ってきた。

欣強
「ただいま!例の宝石問屋の一件で判ったことがあったよ。あれから店は閉まったままなんで、あの店の使用人を探して話を聞いてきたんだ」

永偉
「それで?」

欣強
「使用人はあの前日に店に来た男に母親が病気だと聞かされ、休みをもらい実家に帰ったらしいんだ。でも母親の病気は嘘で翌日店に戻ったら、門に鍵にかかってて仕方なく友人の家に寝泊まりしてたらしい」

連飛
「では、主人が一人になるように仕向けられたらということか」

欣強
「そういうことさ。店に来た男の特徴が長身の男だって言うから、もしやと思って賭場にいた易者の似顔絵を描いて見せたらそっくりだって言うんだ」

一方、京虹は酔酒憩廠に戻ろうとすると鍛冶屋の前で声をかけられた。

鍛冶屋
「兄さん!待ってたんだよ。ふと思い出したことがあって、親父が使ってた古い道具箱を開けてみたらあの鐶があったんだよ」

京虹
「じゃあ、あの鐶は親父さんが作ったってことか?」

鍛冶屋
「親父は几帳面で、注文から納品まできちんと帳に書いていたんだ。見てみろよ、二年前に同じものを八十個作ってる。注文の品は絵も描いて残してあった。これだよ!」

京虹
「これは腕輪だな。一つの腕輪に鐶が八個付いてると言うことは十個の腕輪を作ったってことか。注文者の名前がないな、兄さんはその時のことは知らないのか?」

鍛冶屋
「俺はその頃見習い中だった。取りに来たのは十歳くらいの男の子で、親父も不思議に思ったが金は払ってくれたし。でもちょうど店の外に出た俺は、その子がむさ苦しい三十代くらいの男に渡してたのを見たんだ。あとで隣の阿六に聞いたら江湖の人間だって言ってたよ、それも悪いやつだって」

京虹
「ありがとな。この礼は今度、剣を磨いてもらうよ」

店に戻ろうとした京虹は、ふと先ほど純月と一緒にいた男の腕にも似たような物があったことを思い出した。すぐに引き返し純月と男が曲がって行った路地に走って行くと突き当たりには一軒の古びた家が建っていた。


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