江湖好漢録/武勇双侠
  作者: ミコ   2017年03月27日(月) 22時30分25秒公開   ジャンル:武侠
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第八部(最終部)後編『結集大地』

夜になるのを待った疾風烈火の二人と四鬼邪班の三人は
酔酒憩廠を訪れたが、店の灯りは消え裏木戸に鍵もかかっている。

羽丹
「連飛、出てこい!」

兆軍
「逃げたんですかね」

兆軍は裏口に白煙を仕掛け連飛たちを炙り出す作戦に出るが誰も出てこない。
羽丹は裏庭へ回り、宿へも行くが誰もいない。

ふと庭の木に目をやると吹き矢と共に文が刺さっていた。

『疾風烈火よ、丘の上で待つ 武勇双侠 李連飛、呉京虹』

羽丹
「丘って小川の先だったな。行くぞ!」

五人は丘の上に向かう。

兆軍
「阿能、本当に阿越はチビ女を連れて来るのか?」

阿能
「約束は守る男だ、きっと来るさ。早く行こう!」

丘の上に着くとそこには櫓が組まれ松明が焚かれていた。

羽丹
「連飛、出てこい!」

兆軍
「七彩の連中も出て来やがれ!義賊だなんて正義ぶってるが、お前らも所詮は盗っ人だろ!」

羽丹
「鉢巻き兄ちゃんも一緒に痛ぶってやるぞ。誰が天下の大泥棒だって?俺らの宝を盗もうとしたこそ泥野郎が!」

兆軍
「碧仙門の生き残りじじいも出てこい!総帥も守れず逃げ出した腰抜け用心棒が!こっちには人質もいるんだぞ。早く出てこい!」

連飛
「私たちはここだ!逃げも隠れもしない」

羽丹
「そんな高いところから偉そうに、降りてこい!」

京虹
「俺もここだ!戦いたければ登ってこい!」

無雲
「俺もここだぞ、早く上がってこい!」

兆軍
「行きますか?」

羽丹
「オレはここで待つ、蹴り落としてやれ!なんなら引きずり降ろしてもいいぞ」

兆軍
「おい三人、行くぞ!」

阿宝
「俺は高いところは無理だ」

兆軍
「阿越はまだか?人質を連れてくると行っただろ」

羽丹
「早く行け!」

その頃、純月を探しに出た青雷は念のため、もう一度阿越が使っていた家に行き中を覗くと、純月は阿越と一緒にいた。

純月
「阿越、あんたたちの目的はなんなのさ?」

阿越
「実は俺たちは、、、」

青雷
「純月!助けに来たぞ」

阿越
「青雷さん、来ると思ったよ」

青雷
「どうしてわしが来ると思った?」

阿越
「この場所は見当がついていただろうし、純月を助けに来るのはあんただと思ってた。内力を分けたくらいだからな」

青雷
「内力を分けたのは助けたかったからだ。純月をどうするつもりだ?」

阿越
「奴らのところへ行く、約束だからな。ここで戦ってもいいがそれはあんたからこいつを奪うためだ」

青雷
「奪う?なにを言うんだ」

純月
「ちょっと待って、あたいは物じゃないよ。それに阿越、なに言ってんの?」

阿越
「傷を負わせた責任だ!」

純月
「あ、あれは言葉の文だよ」

阿越
「俺を好きになりそうだったと言ったじゃないか?」

純月
「言ったけど」

阿越
「あれも言葉の文か?」

純月
「青雷さん、連哥たちは?その話はあとだよ」

青雷
「丘の上だ。お前を連れて行くと言ってある、疾風の二人も向かっているだろう」

純月
「すぐに行こう!」

青雷
「お前を救ってからだ」

阿越
「待て!殺さないと言ったろ、見ろ、縛ってもいないだろ。ここで話をしていただけだ。俺が連れて行く!」

純月
「青雷さんあたいは大丈夫。早く行こう!」

阿越
「俺はこいつと馬で行く!」

青雷
「阿越、お前を信用するぞ。わしも連飛の黒艶雄であとを追う、先に行け!」

丘の上では、、、

兆軍は鉄鏈を手に櫓に昇って行き、連飛に向け鎖を投げ脚に絡ませ引きずり降ろそうとしている。

連飛はその鎖を鉄扇で躱し、横の柱に飛び移り足をかける。

京虹
「羽丹、早くあがってこい!まさか高いところが恐いのか?」

羽丹
「うるさい!オレはここがいいんだ。つべこべ言わず早く降りてきて戦え!」

連飛
「仕方がないな。降りてやろうか!」

そう言うと掴み取っていた兆軍の投げた鎖を蔦って下へ降りてきた。

無雲
「仕方がないな。俺も降りてやるか」

無雲も軽功を使い下へ降りてきた。

京虹
「俺の相手は誰だ?父さんと母さんを襲った兆軍、お前か?」

兆軍
「なんのことだ?」

京虹
「お前の持つその鎖は俺の首を絞めた鎖と似ているし、その腕輪の鐶も母さんが襲われた時に落ちていた金具と同じ物だぞ」

兆軍
「お前の親なんか、知らないぞ」

羽丹
「阿能、阿越はまだか?」

阿能
「なんだよ、女を盾にしないと闘えないのか?」

羽丹
「うるさい!連飛、オレと勝負しろ!あの時の屈辱は忘れないぞ!」

羽丹は腰に巻いていた鉄鎖を両手に掴み、連飛に攻撃を仕掛ける。

連飛は投げつけられた鉄鎖を鉄扇で祓いのけ、鉄扇を開き華麗に操る。
羽丹は頬に鉄扇が当たり、傷つけられる。
次に羽丹は鉄鎖を拳に巻き付け、散打の構えでかかっていく。

兆軍
「阿能、無雲はお前に任せる!頼んだぞ」

阿宝
「無雲、お前は少林拳の使い手だろ、俺と勝負しろ!」

無雲
「太極拳も八卦掌も使えるぜ!夢輝を痛ぶってくれた礼だ。いいぜ、かかってこい!」

夢輝
「無雲、頑張ってーーー!」

阿宝は少林通背拳の構えで無雲に向かっていくと、無雲は太極拳の構えでそれを受ける。

無雲
「以前俺が闘った少林寺の僧曰く、そいつの力が六千なら、俺の力は一万だそうだ。負ける気がしないぜ!」

そこへ京虹と昭卓も軽功を使い櫓から降りてきた。

兆軍
「阿能、阿晋、早く奴らを!」

阿晋
「京虹、お前は太極拳の使い手なんだってな。俺と闘え!」

京虹
「望むところだ、来い!」

徳明
「京虹、詩音の仇だ、頼むぞ!」

太極拳と太極拳の闘いだ。
二人とも片足を上げ套路を踏み、交わっていく。
京虹の右手の甲が阿晋の肩を打つ。
阿晋も負けずに右脚を前に出し、京虹の足の間に差し込み倒そうとする。

詩音は握っていた鉄筆を回転して投げると、阿晋の腕に刺さった。

詩音
「やったー命中!」

阿能
「昭卓、お前の迷踪拳を俺の七星拳で敗ってやる。勝負だ!」

昭卓
「妻の仇だ、受けて立つぞ!」

蘭花
「私も行くわ!」

阿能は七星拳の套路から右拳を横に突き出すが、昭卓は迷踪拳の套路からその右拳を肘で躱すと、屈んだ左脚で阿能の右脚を祓う。
蘭花は倒れた阿能の額を鉄のお玉で一発!

蘭花
「こらっ、これでも食らえ!」

兆軍
「俺の相手は誰だ!」

欣強
「おいらの脚技で受けて立つぞ!どうだやるか?」

兆軍
「誰でもいい、かかってこい!」

欣強は跳び上がり三段蹴り食らわせる。
その脚を兆軍は両腕を交差し受けながら、回し蹴りで反撃する。

連飛
「鎖なんぞ使わなくてもお前の拳力はすごいな。私もこれなしで受けて立つ!」

連飛は鉄扇を腰に差すと、掌を前に出し向かっていく。

羽丹
「お前の得意な八卦掌か?オレの詠春拳を食らえ!」

そこへ馬に乗った阿越が現れた。

羽丹
「遅かったな、早くその娘をこっちに!」

羽丹は腰に巻いていた鎖を振り回し、純月に絡みつかせようと投げた。
阿越はその鎖を右手で掴むと馬を降り鎖を手繰り寄せようとする。

阿越
「純月、馬から下りてみんなのところへ一気に走れ!」

兆軍
「おい、なにしてる、逃がすつもりか?」

純月は馬から下りると、櫓の下にいる徳明たちの下へ走っていく。

純月は一度は鎖を避けるが、今度は兆軍の投げた鉄鏈が向こう脛に当たり転んでしまう。

夢輝
「純月!」

夢輝が胸元から抜いた鉄製の花札を回転して投げると、兆軍の手の甲に刺さり兆軍は鉄鏈を放してしまった。

夢輝
「わーお、久々に当たったわ!」

純月は足を押さえ立ち上がるが、走り出せない。
とそこへやってきた青雷が純月を拾い上げると、馬に乗せみんなのところへ走っていく。

阿越
「連飛、早く羽丹を取り押さえろ!」

阿越は兆軍のところへ走り寄り、八極拳の構えで両手を大きく振り上げると、右腕で胸を打つ。

阿越
「欣強、なにしてる?早く蹴り倒せ!」

羽丹
「阿越、お前裏切るのか?金はいらないのか!」

阿越
「阿能、昭卓は元捕吏だ。もうやめろ!」

阿能
「もういいんですか?」

阿越
「晋哥、京虹はただの侠客だ!」

阿晋
「あぁ」

阿越
「阿宝、無雲は義賊だが、まっとうな人間だ」

阿宝
「は、はい」

夢輝
「純月、大丈夫!骨折してるんじゃない?」

純月
「ううん、大丈夫。向こう脛だからすごく痛いだけ」

夢輝
「ホントだ、腫れてる。それより阿越にまたなにかされなかった?」

純月
「なにもされてないよ」

青雷
「ではあそこで二人でなにしてたんだ?」

純月
「話してただけだよ」

美琳
「また変わった趣で襲われてたのかと思った」

青雷
「変わった趣?」

美琳
「首を絞められたんですって」

青雷
「殺されかけたのか?」

純月
「違うよ」

美琳
「愛の服従行為ね」

青雷
「?どんな行為ですか?」

美琳
「青雷にはわからないわね。殺意じゃないの、男が女を支配したいという気持ちから湧き出る欲望というか」

青雷
「はぁ。それにしても純月を痛めつけようとしたのは赦せん!阿越ーーー!」

青雷はそう言うと刀を鞘から抜き走り出した。

純月
「青雷さん、やめて!」

純月は青雷を追いかける。

羽丹
「四鬼邪班、裏切ったなーーー!」

阿越
「羽丹、もう観念しろ!すべてを認めてお縄になるんだ!」

阿越は羽丹の下へ走り出すと胸元から金牌を差し出した。
阿能と阿晋、阿宝も兆軍のところへ走り寄る。

阿越
「悪漢をすべて取り押さえろ!」

阿能
「兆軍、すべて白状して観念しろ!」

夢輝
「どういうこと?」

兆軍
「阿能、なんのまねだ?」

阿越
「我ら、四鬼邪班とはここら一帯を取り締まっている侠捕だ!」

夢輝
「マジで?」

純月
「あたいもさっき阿越に聞いたばかりだよ」

羽丹
「金で動いてたんじゃないのか?」

阿能
「そうだ。府に雇われ悪漢を取り押さえる世直し部隊だ」

阿晋
「お前たちが持っていたあの金はどこから出た金だ?宝石問屋の一件をすべて話せ!」

京虹
「その前に俺から聞きたいことがある。その鎖で父さんを襲い俺の首を絞めたのは羽丹だろ、あの時と同じ鎖だ!母さんを襲ったのは兆軍、お前だろ!その腕輪が証拠だぞ!」

羽丹
「この鎖は鎖王のもので奴から奪ったものだ!そうさ、奴は言ってた。猟師を襲い獲物を奪ったってな」

兆軍
「この腕輪は鋼鎖団のみんなが身につけてる物で俺は鎖王が身につけているのを奪っただけだ。奴はこうも言ってた。山奥の家に入り食い物と首飾りも盗んだってな」

京虹
「鎖王は今どこにいる?」

羽丹
「死んだよ」

阿越
「お前が殺したのか?」

羽丹
「鬼丸と決別し鋼鎖団を解散したあいつは、下っ端だった俺と組もうと誘いをかけてきた。しかし奴は碧仙門との戦いで頭を打たれた後遺症で気が変になっていた。民家を襲い食い物を盗んだり、子供を攫って金にしようと持ちかけられ俺は怖くなって断ったんだ。そしたら今度は俺を殺そうと何度も脅されていたんだ」

兆軍
「俺はその頃、羽丹と知り合い一旗揚げようとしてたから、羽丹を助けようと奴のところへ行き話を始めたら奴が急に暴れ出し揉み合ってるうちに奴は足を踏み外し、谷に落ちて死んだんだ」

欣強
「あの時、お前が宝石問屋から運んでた宝石は?」

兆軍
「あれは鋼鎖団の軍資金として鬼丸たちが盗んだもので、一番頭だった鬼丸が独り占めしようと隠してたものだ」

兆軍
「そのことを知った鎖王は鬼丸と揉めて、鎖王は鬼丸も殺したんだ」

連飛
「鬼丸は青雷さんが殺したんじゃ?」

青雷
「わしは奴が悪事を働かないようにと、すべての腱を切っただけだ」

連飛
「ではとどめを刺したのが鎖王だったということか」

羽丹
「鎖王も鬼丸も死にオレは疾風烈火を立ち上げようと、鬼丸が隠し持っていた宝石を売り、軍資金を作ろうとあの問屋へ兆軍を行かせたんだ」

兆軍
「だが主人が盗品かも知れないと取引できないと疑われ、仕方なく引き上げたんだ」

永偉
「でもあの時以来、主人は行方知れずだぞ」

京虹
「蔵の箱も全部空だっだぞ。買い取ってもらえない腹いせに主人を殺し、宝石を奪ったんじゃないのか?」

兆軍
「違う!もう一度頼んでみようと夜に行ってみたら、蔵の宝石を全部持って夜逃げしたんだ!」

欣強
「主人が一人になるようにしたのはなぜだ?使用人に嘘を吹き込んだのはお前じゃないのか!」

兆軍
「それは確かに俺だ。主人とだけで取り引きしたかったからな」

連飛
「では、お前らが働いた悪事はこの女性たちにした卑劣なことだけか?」

羽丹
「それをやったのは俺に金で雇われた四鬼邪班の四人だぞ。なぁ、阿越たちよ」

阿越
「俺たちはお前ら二人を探るために手を貸しただけだ」

青雷
「ではこの一件で痛い目を見たのは四人の女性だけということか」

連飛
「京虹のご両親の件は気の毒だったが、鎖王も死んでしまったし」

無雲
「その鎖王が死んだのも、自業自得」

青雷
「鬼丸の死も自業自得か」

連飛
「と言うことは、すべては女性たちが四鬼邪班を赦し、京虹もご両親の死を赦せればということになるな」

夢輝
「わたしは無雲に助けてもらったし、腰の按摩はきちんとしてもらって良くなったからもういいわ」

蘭花
「私も肋骨はもう痛くないし、昭卓の愛も確かめられたし、もういいわ」

詩音
「私も傷は残ってないし、徳明の気持ちが本心だとわかったから、もういいわ」

京虹
「俺も仇はこの手で討ちたかったけど、鎖王ももう死んだことだし二人の運命だったと、もう忘れるよ。純月、お前は?」

純月
「針は痛かったよ。でもあの傷で満月が少し欠けちゃったけどこの方がカッコいいからもういいよ」

京虹
「でも傷が残ったろ?」

純月
「三日月に矢が刺さってるみたいで気に入ってるよ」

阿能
「責任取らなくて済みましたね、越哥」

阿越
「そうなのか、純月?」

純月
「取りたきゃ取ってもらってもいいけど、あたいは手のかかる女だよ。それでもいいの?」

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