幻武伝(ファンウーユン)
  作者: 神湖   2016年03月10日(木) 19時59分56秒公開   ジャンル:武侠
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どれほど歩いただろうか。
朦朧とした足取りで鬱蒼とした草むらを彷徨っていた。

足首の鎖が草に絡みつき思うように歩けず、草むらを無我夢中で這いつくばる。

もう誰も追っては来ないと確信し、一息ついたその時・・・
体が宙に浮き次の瞬間、土中に叩きつけられた。

起き上がろうとするが力が入らない。
目に映るのは群青の空に光る星だけだ。
力尽き、気が遠くなる感覚が脳裏をよぎった。

物音に気づき目を覚ますと夜が明けていた。
見上げると男が覗き込んでいる。

「姑娘、大丈夫か?縄を投げるから上がってこい」

起き上がるのがやっとでそんな力は残っていない。

「どうした、動けないのか?」

最後の力を振り絞り、跪き両手を上に伸ばす。

「鎖が付いてるじゃないか。今、下に行くから待ってろよ」

そう言って男は腰に縄を巻きつけ下へ降りて来ると、脇腹に手を回し軽々と抱き上げ穴の外へ出してくれた。

「手枷足枷とは只ごとじゃないな。誰に捕まってたんだ?おい、しっかりしろ」

かすかに頷くと腹が鳴った。

「腹が減ってんのか。俺もこれから朝飯だ、一緒に食うか?」

穴の脇の小屋に入ると鍋の汁物と釜の飯を盛り、丸太で作った台に乗せてくれた。
一心不乱に貪りつく。

「ここ数日獲物にありつけなくてな。それが最後の食い物だ、味わって食えよ。
俺は京悠(ジンヨウ)だ。お前の名は?」

口をパクパクさせるが声にならない。

「それより足の怪我を診てやろう」

鎖が食い込んだ傷が化膿している。

「こりゃひどいな、ちょっと痛いが我慢しろよ」

慣れた手つきで刃物を炙り、傷口を消毒し薬を塗ってくれた。

「最近はあいつらも賢くなってきて罠にかからない。
狩りに行ってくるからここで待ってろ」

京悠は腕を掴まれる。

「なんだよ、一緒に行きたいのか?」

「わたしの名は純霞(チュンシア)です」

「よし、行くか!」


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